『良い接客』は店や人によって変わる
接客業にとって、『良い接客』というのは永遠の課題ですよね。誰もが毎日毎日接客について思考錯誤して、少しでも良い接客ができるように努力を重ねています。
でもその前に、『良い接客』というものがどういうものかを考えたことがあるでしょうか。
『良い接客』は店や人によって変わります。一般的に言われる『良い接客』の要素とは
・言葉遣いなどのマナーがきちんとできている
・笑顔がすてき
・お客様の要望に応えられている
などが挙げられますよね。もちろんこの他にも数多くのポイントがあります。このどれもが必要な要素なのは間違いないのですが、全てを完璧にこなすことができるからといって『良い接客』であるとは言えないのです。
それはなぜか?
例えば、ファストファッションの店と高級ブティックです。
価格も安く、いろんなコーディネートを楽しみたい人にとっては非常にありがたいファストファッションのお店は今となってはどこに行っても見かけます。そんなお店で『良い接客』をしようと思って完璧なマナーや言葉遣いを身に付けることをお客様は望んでいるでしょうか。それよりもフレンドリーに親しみを込めた接客をしてくれたり、混雑するレジでスムーズにお会計をしてくれることの方が重要かもしれません。
逆に政財界や芸能界の面々を顧客に抱えるような超高級ブティックであれば、いかに滞在している時間を優雅に過ごさせてくれる接客かどうかが問われるかもしれません。一般的なアパレルショップではフレンドリーに接することがお客様にとって良いことでも、こういったブティックでは不快に思われてしまうこともあります。
もっとわかりやすく言うと、ファストフードと三ツ星レストランを想像してください。
マクドナルドや吉野家など、いわゆるファストフード店で求められるのは”早さと安さ”が一番でしょう。時間の無いときでもさっと食べられて安く済ませられる。それがわかった上でお客様も来店されています。そんな店で三ツ星レストランばりに、丁寧に時間をかけてサーブをすることなんて誰も求めていないわけです。
その店に来店されるお客様が何を求めているかを理解することによって、はじめて『良い接客』というものは見えてきます。それを知らないままに一般的な価値観だけで判断してしまうと、お客様の求めていない過剰な接客をしてしまい敬遠される恐れすらあります。
お客様が求めている接客は何か?
ではどうやってお客様が求めているものを理解するか。そのためにはまず、自社(もしくは自店)の強みを知りましょう。もしあなたの店がアパレルショップだとしても、ショップやブランドにはそれぞれの特徴があります。その特徴は何でしょうか?
必ずチェックしておきたいのは
・価格帯
・ターゲット(お客様)の年齢層
・地域性
の3つです。
”価格帯”はすごくわかりやすい指標ですね。高ければ高いだけ、その価格に見合うマナーレベルが必要になってきます。価格が安いからと言ってマナーが不要というわけではありませんが、そういう店ではもっと重要視するべきことがあると判断することができます。
”ターゲット(お客様)の年齢層”についても同様です。お客様の年齢が若い店でやたらと丁寧な敬語を使おうとしたところで、お客様とのミスマッチが生まれてしまいます。それよりも、いかに楽しくテンションを上げて接客できるかどうかの方が重要ですよね。年齢層の高い店であれば、落ち着きを持った説得力のある接客ができる方がいいでしょう。
そして”地域性”。実はこれが忘れられがちで、ショップ撤退の原因になることがあります。地域性とはその地域に暮らしている方々の特徴です。実際にその地域の人たちとしっかり接してみないことにはわからないことでもあるのですが、地域によってフレンドリーさが増したり逆によそよそしい感じが強かったりすることがあります。
私は地方出身者なので特によく感じるのですが、同じ東京都内でも地域によって雰囲気が全然違います。田舎である地元の雰囲気に近いフレンドリーな人が多く暮らしている地域もあれば、銀座などの高級店が多い街や、大手町・丸の内などオフィス街ではあまりパーソナルな部分に踏み込まれるのを嫌う方が多い地域もあります。その地域性を無視して、自分たちのやり方だけで出店をしている店なんかが地方ですぐに撤退をしてしまうような憂き目にあったりするのです。意外と”地域性”が大事だということが伝わったでしょうか?
あとは一人ひとりのお客様をしっかり観察して、その方に合う接客をしていくこと。それを何度も繰り返していくことではじめて『良い接客』は生まれます。
ぜひ参考にしてみてください。