こんにちは、kocori代表の坂本りゅういちです。
今回は、ある企業が配信しているYouTube動画について。
あなたは「有隣堂(ゆうりんどう)」という書店をご存知ですか?
神奈川県に母体を置き、関東近郊を中心にチェーン展開している書店です。
・有隣堂
この有隣堂が、2020年からスタートしたYouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」というチャンネルがあります。
この動画が最高に面白くて、今私はメールマガジンなどで布教しまくっているくらいに激ハマりしています。
単なるファンがここ最近やたらと紹介しまくっているYouTubeチャンネルの記事です。チャンネル登録者数1万人を目指しているそうなので、ぜひあなたも!!魅力的な方々がたくさん出てきます!
マツコも知らないPR動画「有隣堂しか知らない世界」の破壊力#MAG2NEWS https://t.co/IMqU4bVfPe
— 坂本りゅういち/販売力向上講座 (@sekkyakusakamo1) February 17, 2021
でも、今回の記事は単に「この動画面白いよ!」というだけの話ではありません。
この動画には、動画配信をしている(もしくはこれからやろうと思っている)全ショップに感じてもらいたい、参考になるヒントがたくさん散りばめられているのです。
私が感じているそのポイントを細かく解説していきたいと思います。
超個人的な所感ですが、ぜひに!
有隣堂しか知らない世界ってどんなチャンネル?
まず先に、「有隣堂しか知らない世界」がどんなチャンネルなのかをご紹介しておきます。
MC役として、ミミズクをモチーフにした「R.B.ブッコロー」というキャラクターがおり、大体はその横に商品を紹介する有隣堂のバイヤーさんや、ハンコを専門に売り続けてきたショップスタッフさんなど、バラエティ豊かな面々が座っています。
基本は、そうした人たちの商品やコンテンツに関する熱い思いを、ブッコローが聞き役として話をしていくという流れです。
中には、人気楽曲を古文訳して歌ってみたなど、「The YouTube」という感じの動画もあります。
話題になっているポイントとしては、聞き手役のブッコローがあまりにもストレートな発言が多いということです。
「ぶっちゃけAmazonで買った方が安くない?」
「TSUTAYAだとTポイントがつくからそっちで書います」
など、店側に言ってはならぬことを平気で言いまくるので、そうした素直な発言が受けているというわけです。実際にそういう発言が面白いのですが、私が個人的に感じているポイントはそこばかりではありません。
この動画で、個人的に「これがすごいなー」と感じているのは、大きく3つあります。
- キャスティングが面白い!
- 聞き手役のここが面白い!
- 演出が面白い!
それぞれについて、ここから解説していきます。
キャスティングが面白い!
メールマガジンでも紹介して、配信元のまぐまぐさんでも取り上げてもらいましたが、この動画はキャスティングの妙を感じる部分が多々あります。
*参考:マツコも知らないPR動画「有隣堂しか知らない世界」の破壊力
MC役のブッコローの話は後ほどするとして、基本は、ブッコローと有隣堂社員(もしくはアルバイト)の2人がメインキャストとして進んでいく流れ。
これまで公開されている動画で、そこに登場する方々は、
- 文房具王になりそこねた女 文房具バイヤー 岡崎弘子さん
- ハイトーンボイス清少納言 有隣堂アルバイト歴3年 折橋慧さん
- 書店をプロレスで私物化した男 有隣堂イベント・マーケティング担当 佐藤貴広さん
- 味噌汁を鰹節削りから始める女 有隣堂飲食事業推進課 長谷部真維さん
- 本の仕入れの全権を握る女 有隣堂商品戦略部 神谷康江さん
- 文房具の仕入れの全権を握る男 有隣堂文房具バイヤー 間仁田亮治さん
- 28年間ひたすら印鑑を売ってきた男 有隣堂横浜西口店印章コーナー 長谷川努さん
- 書店の一角を食品物産展にした女 有隣堂食品バイヤー 内野美穂さん
などなど。(多いな)もうキャッチコピーが面白いですよね。
それぞれがその道のプロとしての役割で話をしてくれることもあり、商品への熱い思いが伝わってきます。
参考記事にも書きましたが、一般的な動画制作の観点からいうと、ビジュアルを重視したキャスティングを意識することが多い中で、こうした普通の社員を起用しつつ、本来伝えたい部分を丁寧にしっかり伝えてくれるあたりは、このキャスティングの面白いところではないかと思っています。(詳しくは参考記事を読んでね)
聞き手役のここが面白い!
次に聞き手役の面白さについて。
先にも紹介した「R.B.ブッコロー」というミミズクモチーフのキャラクターがこの動画の聞き手役です。中の人は、有隣堂社員なのかと思っていたのですが、動画を追っているとどうやら社員の方ではない様子。
このブッコローが存在しているということで、上記の出演者の魅力が際立っていると感じます。
他の紹介記事でも言われていることですが、ブッコロの魅力は「有隣堂のメリットになることを言わない」ということ。ともすればデメリットになるようなことすら平気で口にします。
動画の中では、
- 「Tポイントを貯めたいからTSUTAYAで買う」
- 「Amazonの方が安いですよね?」
- 「ヴィレッジヴァンガードのパクリですか?」
などと、普通に考えて自社の動画で言うようなことではない言葉をバンバン口走っています。
公式では、「ブッコローは正直なだけ」ということらしいですが、そうした歯に衣着せぬ言葉が受けているという分析が多くみられるのも事実です。
ただ個人的には少し見方が違う部分があります。
確かにそうした面白さはありますが、何よりブッコローの存在の功績は、「お客様(役)がそこにいる」という点なのではないかと感じているからです。
ここでいうお客様の価値というのは、「有隣堂のことなどほとんど何も知らない」ということです。
例えば販売員が1人で喋っているとすると、販売員の視点での情報になります。
すると、すでに知識のある販売員が語るため、基本は教える、説明するという流れから脱することができなくなりますよね。
これが販売員2人というキャスティングだとどうなるかというと、実はこれも同じことが起こります。
2人とも販売員なので、やっぱり専門的な知識を持っていて、1人が紹介をしてもう1人が相槌を打っても、それは販売員の相槌になってしまいがちなのです。
そこへいくとブッコローは、ほとんど何も知らないというてい。知っていても、お客様としての視点で話を進めてくれます。
文房具を紹介していたりしても、一般客と同じレベルの知識くらいしか持っていないように見えるのです。
だから、わからないことにはすぐにわからないと言えるし、その内容も顧客目線と同じレベルなので、顧客がつまづくところできちんと解説を入れられる。
余計だと思うところは、余計だとはっきり言うし、顧客が思うところがある部分も、顧客の心の声を代弁してくれている。(ヴィレヴァンのパクリとか、Amazonで買った方が‥というのは顧客の本音と言えます)
これがあるからこそ、商品紹介なども引き立ち、そこを超える魅力を引き出すことにもつながっていると感じるわけです。
こうした視点を持ちながら見てみると、自店で動画を使ってPRをしようと考えた時にも参考になるヒントがたくさん見つかる気がしますね。というか、これを置き換えて考えてみると、本当にお客様に近い役割で「販売員ってなんでこんなところにお金かけてるの?」みたいな企画がいくらでも思いついてしまいます。
とても楽しそうで、かつ、顧客に対しても影響を与えられる動画が作れそうな気持ちにさせてくれます。
ほとんど台本無しでアドリブで喋っているという情報もありますが、こればっかりは真似できる気はしないですけどね。ブッコロー、すごい!
演出が面白い!
最後に演出の面白さです。
上記で書いたキャスティングに関しては、正直言って個性の問題なので、自店や自社のスタッフにそういう個性があるかどうかを見つけ出すことと、それを引き出すことができるかという点で必ずしも参考になるとは限りません。
ただ、この有隣堂しか知らない世界の演出の仕方に関しては、本当にヒントが満載なんです。
まずはテロップについて。
動画を見るとわかってもらえると思いますが、出演者の喋りに合わせて、大きなテロップに色付きの文字が現れていきます。
これがすごいんです。
なぜかというと、ほとんどの動画では、その時間がわずか1秒にも満たないんですね。会話の内容に合わせてテロップが流れるものの、どれもほんの一瞬しか映らない。
その代わりに、かなり大きな文字でかつ色付きという視認性の高さで、目立たせたい部分がすぐにわかり、ちゃんと情報は入ってくる。
このバランスが絶妙なんです。
そしてこれに加えて、編集のうまさがあります。
見てもらうと分かる通りですが、ワンカットがテロップ同様にめちゃくちゃ短いんです。
通常、リアルで会話をすると、自然と「間(ま)」が生まれてくるものですが、そうした間はほとんど無く、すごい勢いで場面が転換していきます。きっと撮影中にはもっといろんなことを喋っているはずなのですが、その中間部分もバッサリカットされて編集されているわけです。
YouTubeのような動画を実際に撮影してみるとよくわかるのですが、いろんな店の動画を見ても、冗長に語っていることが結構多くあります。
同じようにスタッフの誰かが商品について喋っているのですが、その喋りのワンカットがかなり長く、喋り自体も結構ゆっくり喋っていることがほとんど。
しかし、YouTubeのような動画に関していうと、それは逆効果を招くことが少なくありません。(内容にもよりますが)
(この動画の2:13あたりからは本当に凄い)
大多数の人気動画では、冗長な喋りが長々とワンカットで続くことがありません。
YouTubeという動画媒体は特にその傾向が強くて、本を読むような感覚とは違い、視覚的に欲しい情報だけを見ていくという情報の受け方になっている人が多いためです。そうなると、やたらとダラダラとしゃべり続けているような動画は、視聴者はすぐに飽きて飛ばしてしまうようになります。見ていられないのです。
そこを相当に研究されているのでしょう。ワンカットが1秒以下のことも多く、喋っている最中でもバンバンカット割が入っています。だからスピード感があり、5分以上の動画でも飽きずに見続けることができるのです。
自分の店なら?
そんなわけで、「有隣堂しか知らない世界」の魅力をお伝えしてきました。
個人的には、学生時代によく見ていたTVKの「sakusaku」を思い出してしまう部分もあって(木村カエラ好きだったなー)純粋に楽しんでいるところが大きいのですが、今後、企業やお店がYouTubeを使って発信をしようという時には、参考にしたい部分がたくさんありました。
もちろん全てを安易に取り入れるということではなく、自分たちのブランドに合わせたやり方が求められるのが情報発信です。
ただ、こうした動画をただ眺めるだけではなくて、「自分たちならどうしようかな?」と考えてみるのも面白いと思います。
ぜひあなたも『有隣堂しか知らない世界』の魅力にドップリ浸かってください!
画像動画引用元:有隣堂しか知らない世界YouTubeチャンネル