こんにちは、坂本りゅういちです。
コロナ禍で、販売現場が大きく様変わりをしている中、研修をしている際や、取引先との打ち合わせで本当によく聞くのが「どうアプローチすればいいかわからない」という声です。
声をかけられたくないお客様が増え、また、販売員側の気持ちの中にも、お客様との接点を減らしたいという不安から来る思いもあり、お声かけをすることが難しくなっていると言われています。
そもそも、コロナ以前から、近年は「販売員から声をかけられること」に対して嫌悪感のようなものを持つお客様は増えていました。
ネットを見ても、
- 「すぐに声をかけてくるのは本当にやめてほしい」
- 「ゆっくり見たいし、必要な時はこっちから声をかけるからそっとしておいてほしい」
といった声は散見されますよね。
こうした言葉を目にする度に、販売員はどんどん声をかけることに抵抗が生まれていき、来店されたお客様がいても、アプローチをかけることを躊躇うようになっています。
声かけが難しいなら、声をかけられるようになればいい
話は少し変わりますが、あなた(販売員だとします)はお客様から声をかけられる機会は多いですか?
どんな内容でも構いません。
例えば、「〇〇ってどこに置いてますか?」と商品の場所を聞かれるでも良いでしょう。
「トイレってどこにありますか?」と商業施設などで道を聞かれるということもあるかもしれません。
そうした、お客様から声をかけられる機会が多いか少ないかです。
これが実は今、店頭に立つ販売員にとっては重要な要素になってきています。
先にも書きましたが、お客様に声をかけることは以前と比べても難しくなってきています。
事前にお客様自身が商品について調べてきていることも多く、お客様もある程度商品に関する知識は持っている場合が多くあります。また、店舗(=買う場所)が増えたことで、誰もが買い物をすることに慣れているため、昔と比べて販売員のサポートを必要としないお客様も増えています。
コロナ禍も含めたそうした背景もあって、お客様に声をかけるのは簡単ではなくなってきているわけです。
でも、声をかけるという行為は、イコール、接客への導入ということでもあります。
接客に入れた方が、接客に入れないままよりも商品が売れる確率は高くなるため、(これは売上データが物語っていますね)出来る限り接客の導入口を増やすためにも声はかけたいというのが本音でしょう。
ですが、接客の導入というのは声をかけることだけでは決してありません。
声をかけられることもまた、同じくお客様との接点になるのですから、接客の導入になり得るのです。
だからこそ、声かけをうまくやることを考えるのと同時に、声をかけられる回数を増やすということも等しく重要だということなのですね。
どうすれば声をかけてもらいやすくなるのか?
ここからが本題です。
「じゃあ具体的にどうすれば、お客様は自分に対して声をかけてくれるのか?」ということですね。
ここで考えておきたいのは、「声をかけられるのは偶然ではない」という事実です。
店頭に立っていると、自分が必死にアプローチをしてはフラレることを繰り返している中、一見何もしていないように見える、ただ突っ立っているだけの他の販売員がお客様から声をかけられて接客に入り、商品が売れていくという光景を目にすることがあるかもしれません。
それを見ると、「自分が必死に頑張っているのにずるい!」と感じてしまうかもしれません。(その気持ちはめっちゃわかります笑)
個人売りがある店ならば、尚更でしょう。
でも、その販売員が声をかけられたというのは、よくよく考えてみると偶然ではないかもしれないのです。
なぜなら、お客様は声をかける人を選んでいるという明確な理由があるからです。
例えばあなたが、誰かに道を尋ねたいと思った時のことを思い出してみてください。
その時、道を尋ねる相手とはどんな人でしょうか?
そこにヒントがあります。
声をかけられやすくなる3つの要素
私なりの考えですが、他人に声をかける時というのは、大きく3つの要素が絡み合って声をかける判断をするように思います。
- 距離感
- 声のかけやすさ
- シチュエーション
という3つの要素です。
それぞれについて、解説をしていきます。
1 距離感
他人に声をかける時は、自分と相手との距離感が重要になる場合が多くあります。
これは全ての状況には当てはまらないのですが、声をかけたいと思った時にあまりに遠い場所にいる相手と、近くでちょっと合図をすればわかってもらえるような距離感とだと、どちらが声をかけやすいかです。
お店という場所では、わざわざ手を挙げて販売員を呼ぶよりは、ちょっと顔を向けて「聞きたいことがありますよ」と合図を出せば販売員がすぐに来てくれるくらいの距離感の方が声はかけやすいでしょう。
適切な距離はその時々によって変化しますし、店の広さなどによっても変わってしまうものなので、明確なことは言えませんが、顔の表情が確実にわかる程度の距離(3〜5m前後くらい)が良いと思われます。
これ以上近いと、「接客をしたがっている感」が強く感じられやすくもなるので、販売員である自分が声をかけるか、それともお客様が声をかけられたくなさそうだから、声をかけやすい距離に待機するかという判断をしたいところです。
*距離感は、店内・通路の広さによって大きく変動するので、自店の適切な距離を見つけましょう。
2 声のかけやすさ
より重要度が高くなるのは、声のかけやすさです。
これはさらに、「見た目」と「動き」という点においてポイントがあります。
見た目
「見た目」は言葉通りです。声をかけやすい見た目になっているか?ということですね。
まず第一に、清潔感と表情です。
人の印象を決める上で男女ともに重要だと言われるのが清潔感ですから、出来る限り清潔に見えるようにしておくというのは欠かせません。
また、表情についても同様で、怖く見えてしまう、キツそうに見えてしまうということは避けるべきです。普段店頭に立っている時、作業をしている時もなるべく柔和に見えるようにしておきたいところです。(ここではこの2つの詳細は省きます)
問題はその先です。
これがとても難しい部分なのですが、こうした見た目の話になるとどうしても完璧に見えることが求められがちです。アパレル販売員などで考えると、完璧なコーディネート、完璧や立ち姿という部分ですね。
しかし、見た目は完璧であれば良いということでもないのです。
ここで大事なのは、「隙」を作るということにあります。
わかりやすく言うなら、異性とのコミュニケーションについて考えてみると良いかもしれません。
ものすごいイケメン、ものすごい美人。
スタイルも完璧で、コーディネートもメイクもバッチリ決まっていて、非の打ちどころもなさそうな人がいたとしたら、あなたはその人に気兼ねなく声をかけることができますか?
これって、結構難しくありませんか?
完璧であればあるほど隙は無くなるわけですが、それはイコール、声をかける隙も無くなるということでもあります。そこに緊張感が生まれてしまえば、声をかけてもらえる可能性は下がってしまうのです。
だから隙を作る必要があるのですが、だからといってコーディネートをあえてダサくするとか、メイクを崩すというわけにはいきません。(ファッション系なら尚更そうですよね)
だから、「動き」が重要になります。
動き
ここで言いたいのは、隙を作る動きを身につけるということです。
ここでは詳細は伏せますが、コロナ禍以降の2020年から2021年初頭にかけて、いくつかの種類のアパレルショップにおいて、販売員が店頭で声をかけてもらえている率を調査してみました。
すると、店頭での所作に隙がない(=立ち姿勢や所作が美しい)販売員ほど、声をかけてもらえておらず、そうではない販売員の方が声をかけてもらえる率が高かったのです。
例として声をかけてもらえていない、お客様が近寄らない販売員の特徴を挙げておきます。
■姿勢の良い販売員
背筋がピンと伸びて、姿勢の良い販売員。接客業をやっている側からすると理想的な販売員ですが、お客様はあまり近寄ってはくれていませんでした。一方で、少し猫背に見えてしまうような動作をしている販売員に対しては、お客様は警戒心を解いて近づいている様子が見て取れました。
■足の開きが大きい販売員
足を開いて立っている販売員は、周りにお客様が近寄らない傾向がありました。男性販売員に多かったのですが、おおよそ30cm程度足を開いて、手を前に組んでいる販売員です。足を開いている状態で立つというのは、縄張り意識を強く表してしまうため、お客様の心理にも影響を与えているようです。
■歩くスピードの速い販売員
販売員らしくシャキシャキと歩いている販売員に対しては、あまり声がかからず、ゆったりと歩いている販売員に声をかけるお客様が多くいました。お客様が声をかける時間的な余裕が影響しているようです。
■視界に入る販売員
お客様の視界に入っている状態をキープしている販売員には、お客様が近寄りにくい傾向がありました。一方で、しゃがんで作業をしていたり、屈んで作業をしているような販売員には声がかかりやすい傾向も見られました。
上記はあくまでも一例に過ぎませんが、それぞれがこれまで販売員に求められてきた常識とは逆の状態になっていることがわかります。
正しい姿勢で、美しい所作で、キビキビと動くということが販売員の理想像とされますが、必ずしもこれが正解とはならない場面もあるということです。
お客様が声をかけやすい動き方がどういうものなのかは、本当に研究しなければならないと言えるでしょう。
3 シチュエーション
そして3つ目がシチュエーションです。
お客様が声をかけてくれるということは、何かしらに困っている、何かしらの要望があるということでもあります。
何の用も無ければ、わざわざ販売員に声をかける必要はありませんから、声をかけるシチュエーションが必要です。
これはもう待つしかないと思われがちな部分でもありますし、実際にそうだとも言えます。
しかし、お客様が声をかけるシチュエーションに近づけることは、販売員の力によってできることもあります。
例えば、アパレルショップならそのお客様が興味を持ってくれそうな商品を近くに置いてみるという行動。
お客様観察から、そのお客様が興味を持ってくれそうな商品を持ってきて近くに置いてみたりできると、お客様が商品を見て何か質問をしてくれるかもしれません。
また、最初に一言だけ挨拶程度の声をかけておくことも大事です。
店内に入って一切接点の無い販売員よりも、「こんにちは」程度の挨拶をして接点でできている販売員の方が声をかけやすくなる傾向があるからです。細かくは、ザイオンス効果などを検索してもらえればわかるかと思いますが、挨拶をしておくというのはポイントですね。
かなりの荒技ですが、あえてディスプレイを崩すということもできます。
わざと商品を見づらい状態にして、(その場限りですが)「これ見ても良いですか?」と声をかけてもらえるようにするなどの技もなくはありません。
まぁこれは極端な例で、本当にうまくやる必要があるので、安易に真似してもらいたくはないですが。
いずれにしても、お客様が声をかける必要性が出てくるのはどういう時か?
そしてその時にどういう状態でいれば、お客様は声をかけてくれるかを考えておくことで、自分から声をかける接客の導入ばかりではなく、お客様から声をかけてもらい接客導入につなげる可能性が高まります。
最終的に購買につながるのであれば、入り口はいくらあっても損することはありません。
ぜひ、お客様からたくさん声をかけてもらえるような販売員になりましょう。