こんにちは、坂本りゅういちです。
新人教育などに携わっている方なんかだと、普段の会話の中で『常識』という言葉をよく使いますよね。
「最近の若者は常識がウンヌンカンヌン…」なんて言っているおじさまも、たま〜に見かけますが、あなたはどうでしょうか?
まぁ今回は、そういう話は置いておいて、『常識』という部分に焦点を当ててみたいと思います。
『常識』という言葉の意味を調べてみると、こうありました。
「一般の社会人が共通にもつ、またもつべき普通の知識・意見や判断力」
世間的には、「あの人は常識がない」とか、「常識的に考えて」とか言ったりすることが多いのですが、接客販売の仕事においては、これが間違った方向に向かうことがあります。
まぁ簡単に言ってしまえば、あなたの常識なんて当てになりませんよという話です。
ともすれば、その常識によって、せっかく売れるはずだったものが売れなくなってしまうという恐れだってあります。
そもそも常識って何なの?
接客販売の仕事では、対象となるお客様が沢山います。
毎日、お店に来店してくれるお客様は、基本、全員が買ってくれる可能性のあるお客様ですよね。
その中には、学生さんもいれば主婦の方もいますし、お医者さんや弁護士という人、はたまた、もしかすれば、政治家だっているかもしれません。
さて、ここでさっきの『常識』という言葉の意味を読み返してみてください。
「一般の社会人が共通にもつ」とありますが、この「一般の」という点がポイントです。
先ほど挙げたように、お客様の中には、様々な職業や年齢、性別の方がいらっしゃいます。
例えばその中でも、主婦にとっての「一般」と弁護士にとっての「一般」はどう考えても同じとは思えませんよね。
その主婦の中にも、東京都内の麻布十番あたりで暮らしている専業主婦の方と、筆者の実家がある佐賀県で暮らしている専業主婦の方とでは、また「一般」の解釈は違うはずです。
千差万別のお客様がいる中で、『常識』という同じ言葉を使っても、その中身は全く異なるということなんです。
販売員の常識が非常識になる
何が言いたいかと言うと、そんな風に人(=お客様)は千差万別なのですから、あなた自身(=販売員)の常識に当てはめて接客や提案をしていると、お客様にとっては非常識になってしまう可能性があるということです。
つまり、販売をしている人間が、お客様の常識に合わせなければ、売れなくなってしまう可能性が生まれてしまうということなんですね。
わかりやすい例だと、金額についてです。
あなたが紳士服を売る販売員だと仮定してみましょう。
そのお店では、あるスーツを30万円で売っていたとします。
ちょっと極端な例ですが、もし、あなた自身が、普段3万円のスーツを着ているのだとしたら、この30万円というお値段は、ものすごく高く感じますよね。
販売員の常識では、「30万円のスーツは高いから、まず買わない」という常識になるわけです。
ですから、この常識に則って、「このスーツは30万円もするので、高いですよ。こっちのスーツならもっとお安いですから、こちらにしてはいかがですか」と、お客様にお勧めしました。
でも…
実は、そのお客様は、いつもオーダーメイドで、50万円以上かかるようなスーツばかり着ている人だったとしたら。むしろ、30万円のスーツは、「お買い得」だと思っているかもしれません。
このお客様にとっては、「スーツは50万円以上するもの」という常識があるわけです。
だから、良かれと思って、『買いやすいであろう価格のスーツ』を提案するような接客をしてしまうと、おそらくこのお客様は、喜んで商品を買うどころか、自分のことを安く見られたと思って、気分を悪くして帰ってしまうことでしょう。
まぁ状況的には起こりにくい、ほんの一例ですが、本当にこんなことはよくあります。
実際、私は以前に、都内の某百貨店に勤めていましたが、そこでは、耳を疑うような話を毎日お客様から聞かされていました。
「そんなところに、そんな金額を使うのか」と、自分の知らない世界があまりにも広すぎて、愕然とするようなことも、一度や二度では無かったのです。私の常識と、お客様の常識がどれほど違うのか、思い知らされることばかりでした。結局、自分の常識で測れるものなんてほんのちっぽけなものだと言うことです。
常識を否定しないように、注意しよう
ですから、もしあなたが接客をしていて、「これはちょっと高いな」とか、「これはちょっと良いとは思えないな」と感じるようなことがあったとしても、その感覚は、あなた自身の『常識』に当てはめた感覚でしかありません。
お客様にとっては、全く違う見え方をしている可能性の方が、むしろ高いと言えます。
そこに注意を払っておかないと、常に自分の感覚での『常識』で話をしてしまい、お客様の常識を否定してしまう恐れがあります。
そうなってしまっては、お客様に商品を買ってもらうどころか、不快にさせてしまうかもしれません。
試しに、自分が一番お金を使っているモノやコトに対して、周りの人が同じようにお金を使えるか聞いてみてください。
まず、「そんなにお金を使うなんて、信じられない」と言われてしまうことでしょう。それと同じことです。
お客様の『常識』がどんなものかを知るためには、まずヒアリングをすること。
そして、その『常識』に合わせたご提案ができるようにしたいですね。