接客販売業界は、楽しさを語れなければ未来はないのではないか

こんにちは。

kocoriの坂本りゅういちです。

日頃、販売現場に関わる多くの方々とお話をさせていただいておりますが、その中で、ここ最近、強く感じていることがあります。

『販売(接客)業界は、楽しさをもっと語るべきではないか?』ということです。

このことに関しては、これからの業界の行方を左右してしまうのではないかと危惧しているほど、重要なことではないかと考えています。

今回の記事は、ものすごく賛否ありそうな気がしていますが、あえて書かせていただきます。

辛さや苦しさを聞かされたところで…

昨今、接客販売業界は、とても苦境に立たされています。

ご存知のように、どこへ行っても、人が足りなくなっているからです。

例えば、アパレル業界では、どの企業も、人材確保に必死になっています。せっかく長く働いてくれていた人たちが、未来がないからと退職していき、さらに、そもそも業界に入ってくる人材自体が不足しています。

昔は、憧れの存在と言われていた、アパレル販売員も(女性販売員は、ハウスマヌカンなんて呼ばれていた時代もありましたね)今となっては、誰も憧れなくなりつつあります。

そうなってしまった理由は、決して一つではないでしょう。

昔と比べて、ネットの普及により、またサービスの多様化により、消費の仕方そのものが変化している現代では、リアルショップの販売員の役割自体も変わっています。

実際に買い物に行っている人たちが、「あまり接客を受けたくない」と思うことが増えていることも手伝ってか、販売員になりたいと思う人が減っている傾向にあるわけです。

そして、将来消えてしまう(いなくなる)であろう職業などでも、消えてしまうとまでは言われていないようですが、おそらく数は減らすであろう職業として取り上げられる機会も増えています。(実際に私も、消えはしないであろうとは考えつつも、確実に数は減るだろうことは間違い無いと考えています)

ただ、ここまでの状況になってしまったのには、業界自体の責任が大きいと思うのです。

正直なところ、販売員という仕事を業界があまりにも軽く見すぎてきたように感じます。

そのため、福利厚生の整わなさや、就労時間の長さなど、いろんな部分で問題が表面化し、世の中の人たちが現実を知ってしまったんですよね。

加えて、小売業界の人たちが、今現在も、「販売員ってこんなに辛いんだよ」「接客業って、こんなにしんどいんだよ」ということを声高に叫んでいます。

確かに、それはおっしゃる通りだと思うのですが、(私も経験しているだけに辛さや苦しさはよく分かります)そんなネガティブな情報ばかりを聞かされた人たちが、果たして小売業界に入りたいと思えるでしょうか。

まず、誰も入りたい、働きたいとは思わないですよね。

結局、業界に入ってくる人材を減らしているのは、(私も含めて)業界の人間のような気がしてしまうのです。

語るなら楽しさも

で、何が言いたいかというと、結論から言えば、「もっと楽しさも伝えていきましょうよ」ということです。

リアルショップで販売を続けている方は、少なからず、接客販売の楽しさを知っている人が多いのではないでしょうか。

例えば、私の場合ですと、やっぱり、お客様から直接『ありがとう』とか、『あなたに接客してもらえてよかった』なんて言葉を言われてしまう喜びを忘れることができません。

経験上、販売業を経験した後に、諸々の都合で、工場で働いていたことがあるのですが、その頃は、自分が作っている製品が、どんなお客様の手に渡るのかもはっきりわからず、お客様の顔が見えないため、それがとても寂しかったのです。(もちろん、これは私がそう感じたというだけの話で、工場で働く人を否定したいわけでもなんでもありません)

また、店舗で販売業をやっていると、お店の運営に関わる部分を色々と知ることができます。

店長などになれば、店の売上管理や、スタッフのシフト管理、その他の契約事項や、対外組織とのやり取りなど、多岐に渡る仕事を経験することになります。ほとんど経営者に近いような内容の仕事ができるわけです。これも、リアル店舗で働く販売員の特権と言えるかもしれません。

人によって、どこに喜びや楽しさを感じるかはそれぞれだと思いますが、そういう楽しさや喜びを、もっと小売業界は伝えていくことが必要なのではないでしょうか。

お店の雰囲気で採用状況が変わっている

なぜこんなことをわざわざ書いているかというと、これが実際の現場の採用状況に影響を与えているからです。

実は、私が関わらせてもらっているある商業施設では、採用に困ったことがない店舗と、常に採用に困っていて、人手不足になっている店舗があります。

その2店舗は、どちらも同じフロアで、目の前に店舗が向かい合っているお店同士なんですね。

にも関わらず、片方はすぐに人材が確保できて、片方は常に人材に困っているのです。

恐ろしいことに、どちらの店舗もほぼ似たような商品を扱っていて、店の広さも同じくらい。企業の知名度もほぼほぼ変わらないレベルにあります。

にも関わらず、採用状況に違いが出ているのは、会社や売っている商品によるものではありません。

店の雰囲気なのです。

採用に困っている店舗では、いつ店の前を通っても、スタッフの姿があまり見えません。ほとんどレジ周りにいるので、広い店舗にスタッフがいないように見えます。

また、お店に入っても、スタッフが「いらっしゃいませ」などの声かけをすることもありません。スタッフ自身も、レジで下を向いて何か作業をしているのか、怖い顔をしています。

一方、採用に困っていない店舗では、いつ店の前を通っても、スタッフの元気な声が聞こえてきます。「いらっしゃいませ」などの挨拶や、「〇〇入荷しております!」などの声出しが行われているのですね。

また、店内に入らずとも、スタッフが常に店中を動き回っていて、とても活気があるように見えます。

この店の雰囲気の違いが、採用に大きく影響をしているというわけです。

なぜなら、「この店で働こう」と思う人は、必ず、店を見にきます。

これから自分が働くかもしれない店が、「どんな店なんだろう」と思うのは人情ですよね。

もし事前にこなかったとしても、面接の時などには、やはり店を見ることになるので、店の雰囲気を察してしまうのです。

そこで、暗い顔をして、とてもじゃないですが、楽しそうには見えないお店だったらどうでしょうか。そんなお店で働きたいと思える人がいるでしょうか。

結局、せっかく面接までして合格通知を出しても、連絡が取れなくなる、なんてことになってしまうのです。

逆に、楽しそうに働いているスタッフが多い店には、自然と人が集まってきますし、なんなら(言い方は悪いですが)人を選ぶ余裕すら出てきます。

そして、良い人材ばかりが集まるようになり、さらに店の雰囲気も良くなっていきます。

先ほどお伝えした某店では、スタッフ募集の告知をしていないときでも、「アルバイト募集していますか?」と電話がかかってくるほど、人材に関しては余裕があります。

この事例こそ、業界がもっと楽しさを伝えるべき理由になり得ると思うのは、私だけでしょうか。

どんな発信をしていくべきか

『働き方改革』や『ワークライフバランス』といった言葉が出てきている中で、これから、小売業界がどんな発信をしていくべきか。

もちろん、嘘をついてもしょうがないので、確かに辛い部分や苦しい部分を伝えていくことも大切だとは思います。

しかし、それと同時に、もっと楽しさや喜びを発信していくこともまた、大切だと思うのです。

「接客をやっていると、こんなに嬉しいことがあるんだよ」

「販売業だからこそ、こんな経験ができるんですよ」

そういったリアルな言葉を一緒に発信していくことで、また、小売業界で働きたいと思ってくれる人が増え、業界に新たな人材を迎え入れることができるように感じます。

真面目な話、販売員として結構稼いでいる人も世の中にはいたりするので、そういう人たちが「このくらい稼いでるぜ!」なんて言ってくれたりすると、大きな影響力があるような気もするんですけどね(笑)。

ちなみに私は、色々と実績を上げたおかげもあって、約1年ほどで、収入が倍近くに上がった、なんて経験もあります。(あえて今回は言わせてもらいますが)まぁ収入だけが楽しさや喜びではないので、どんなことでも良いんです。

ともあれ、小売業界はどんどん楽しさを発信していくべき時だと思います。

それが、今後の業界の未来を明るくしてくれる一つの要素になるかもしれません。


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ABOUTこの記事をかいた人

接客販売トレーニング&コンサルティング事務所kocori(ここり)代表。 SC接客マイスター1級。 アパレル・時計・靴・リラクゼーション業界など、様々な販売を経験し、売上日本一など数々の実績を残す。kocori設立後は、企業研修・コンサルティング、講演などを中心に活動している。