お客様をファン化するために
『お客様に、ショップのファンになってもらう』
これはショップにとっての至上命題です。
ファンにさえなってもらえれば、幾多あるショップの中から、自店を選んでもらえる確率は上がり、自然と売上も向上していきます。
だからこそ、各メーカーや各ショップは、お客様をファン化するために躍起になっているわけです。
そのための方法はすでにいろんなものが存在しています。
大手メーカーやショップであれば、ポイントシステムを導入しているところも多いですよね。最近は、スマホアプリなどに移行していることも増えていますが、ポイントを貯めてもらうことで、お客様の囲い込みを図っています。
また、メールマガジンやDMなどを使って、お客様へ直接アプローチをかける手法も昔から行われています。
ですが、こういったやり方は、お金もかかりますし、完全に使い古されているといっても過言ではありません。
ポイントカードなどは誰もがあまり持ちたがりませんし、持っていたからといって、お客様がファンになっているとは言い難いものがあります。
メールマガジンなどにしても、メールを送ったからといって見てくれているかどうはすら定かではありません。
それでは、ファン化することはできず、(思い切った言い方をすると)無駄とも言えるような、ポイントカードやアドレスの獲得に労を割いていることになります。
大手ならば、それらも数という強みを持ってやっていけるかもしれませんが、小さな一ショップではなかなか難しい部分もあります。
そんな中小と呼ばれるようなショップこそ、お客様をファン化するためには、もっと根本的な改革が必要なのではないでしょうか。
体験を求めている
少し話は変わりますが、中国のインバウンド需要が落ち着いた原因の一つに、
『体験を求める人が増えた』という理由があるそうです。
以前は、日本製のものであれば何でもいいくらいの勢いで、中国人の方々が日本のショップで買い物をしていました。
しかし、そういった”モノ”への消費意欲は薄れて(飽きて)、体験=”コト”への興味関心が増しているというのです。
そのせいか、日本のショップへのインバウンド来店客数は下がっていても、地方などの観光地などでは、インバウンド客数は増えていたりもします。
そして、皆さんもご存知のように、日本人はすでに、”コト”に意識が向いています。
もはや、”モノ”に関しての煽りは通用しなくなっているのです。
この辺りは、とうの昔に、いろんな識者の方々が語ってくれています。
だからこそ、これからのショップは、お客様にもっと、体験を提供していく必要があるわけですよね。
そういう意味で、個人的に以前から、「どうしてやっているところが全然ないのだろう?」と思うようなことがあります。
ショップにとって当たり前のことを、お客様に体験してもらうことです。
ポイントカードやメールマガジンでの囲い込みなんかよりも、圧倒的に楽しそうですし、興味関心がある方が多いはずなのに。
ショップにとって当たり前のこと
販売員やショップにとって、当たり前となっている仕事はたくさんありますよね。
接客や事務作業もそうですし、お店づくりと呼ばれるような仕事や、仕入に関する仕事などもそうです。
そういった仕事は、どんな販売員も日常のひとつで、何とも思っていない人が多いでしょう。
しかし、お客様にとっては違います。
例えば、セレクトショップの仕入れのために展示会に行くという行為です。
セレクトショップに足を運ぶ人というのは、基本的にファッション感度が高い人がほとんどでしょう。
ですが、ファッション感度が高いからといって、ファッションに関する仕事をやっているとは限りません。
事務職の人もいれば、営業で毎日外回りをしている人もいます。
そういった方々にとって、展示会と行くという体験は、普通では考えられないことです。
セレクトショップの店長やオーナーであれば当たり前のことかもしれませんが、展示会に足を運ぶという行為に憧れを持っている人だって少なくはないんですね。
これって、体験の提供に使えると思いませんか?
(実際にできるかどうかは別として)いつも来てくれているお客様と一緒に、展示会へ向かい、新商品を物色する。その案内や、どんなところを見て仕入れを決めているかをツアーとして提供できれば、これは確実に素晴らしい体験提供となりえます。
もしかしたら、お客様に仕入れて欲しい商品を選んでもらう、なんてことも可能かもしれません。
何も、展示会だけに限ったことではありません。
お店では、ディスプレイを組むという仕事があります。
それらすべてを販売員でない人に任せるわけにはいきませんが、ボディ一体を組んでもらうことはできなくはないはずです。
お客様は、基本的に販売員にコーディネートを組んでもらいます。
しかし、感度の高い人であれば、ショップにある商品を使って、自分なりのコーディネートを組んでみたいと思っている人もいます。
そういう人に、場を提供してあげるだけです。
『3日間、このボディに着せるコーディネートを作ってもらう』
という体験を提供できれば、楽しんでやってくれるお客様は多いでしょう。
これもまた、一つの体験提供と言えます。
とにかく発想してみる
ちょっと例えがアパレルに偏りましたが、上記したようなことが、実際にできるかどうかはわかりません。
ショップにもよるでしょうし、いろんな権利関係で難しいものもあります。ショップからすれば、現金商売ですから、売上が下がってしまう恐れのあることは怖いというのも、もちろんわかります。
それでも、お客様は今のままポイントカードを作っているだけでは、ファンにはなってくれません。
もう誰もそんなものを望んではいないんです。
だから、とにかく考えて発想してみることが大事。
「お客様は何をしたいと思っているのか?」
「何ができるお店なら楽しんでくれるのか?」
「また行きたい、誰かに紹介したいと思ってくれる店になるには?」
と、常にお客様のことを考えて、自問自答を続ける。
そうやって生まれて来たものが、業界を変えるレベルの改革を引き起こすかもしれません。
これは逆に大手ほど難しく、小さなショップであればあるほど、自由度が上がってやりやすくなることでもあります。
本気でファンを作りたいと思うなら、いろんな方向から思考を巡らせてみましょう。