
補助犬同伴に関わる法律
今回はいつもと少々毛色の違う話ですが、必ず知っておいてほしい内容です。長くなりますがお付き合いください。
先日、阪急百貨店うめだ本店内の喫茶店2店舗で聴覚障害者の女性が聴導犬の同伴を断られていたことが公になり波紋を呼んでいます。当日に同じフロアで補助犬啓発イベントが行われていた直後の話だったこともさらに話が大きくなっている要因でしょう。
この話題を知って私も色々と調べました。そして恥ずかしながら、私自身も全くこの問題について認識できていなかったことを知りました。学んだ情報について、これはかなりの数の事業者・販売員が知らないことだとも感じるので、今後の接客においてトラブルを避けるためにもお伝えしたいと思います。
まず最初に知っておきたい最大のポイント。店舗を構えている側(飲食店含む)は補助犬の入店を受け入れることが”法律で義務づけ”られています。
※参考 身体障害者補助犬法 ⇒http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H14/H14HO049.html
第七条、第九条において『不特定かつ多数の者が利用する施設を管理する者は、当該施設を身体障害者が利用する場合において身体障害者補助犬を同伴することを拒んではならない』と明記されています。(この限りではないことにも記載がありますが、これは『著しい損害が発生し、又は当該施設を利用するものが著しい損害を受けるおそれがある場合』とあるため該当することはごく稀でしょう。)
認識不足からくる不安
今回の問題で、補助犬利用者にたいする反射的な批判として「衛生面の不安」「犬アレルギー」「ペットとの区別がつかない」と言った批判も出ていますが、これも認識不足からです。
いわゆる『補助犬』と呼ばれる犬には3種類が存在しています。
- 盲導犬(視覚障害者)
- 介助犬(身体障害者)
- 聴導犬(聴覚障害者)
それぞれを障害を持つ方々をサポートするために訓練施設で訓練を受けており、一般的なペットとは大きく異なります。衛生面のガイドラインも厳しく、指示なしでむやみに動くこともないように訓練を受けているそうです。定期的に補助犬に問題が起きていないかなどを確認するような制度もあるようで非常に信頼性も高いと言えます。
また、補助犬はそれとわかるような表示をされた格好をしていたり連れた人に『認定証』の携帯が義務づけられているため、店側が掲示を求めることもできます。ペットがどうかよくわからないということも認定証の確認で認識できるのです。
こういったことから、店舗に補助犬を入店させる際は入店時にアレルギーの方がいないか確認したり、周りのお客様に周知することによりトラブルを防ぐことは可能なのです。
ここまでで補助犬に対する認識と受け入れの義務についてはおわかりいただけたと思いますが、最大の問題はもっと根深いところにあります。
この全てが『知らなければ意味が無い』ということです。
私も様々な店で働いてきましたが、明確にこの義務を伝えている店や企業は存在しませんでした。大手の百貨店でも聞いたことがありません。国がいつの間にか制定していて(平成14年制定なので10年以上前です)大した周知もされず、さらに企業側も従業員に教育をすることもない。決して法律があるから入店を認めるというわけではなく、思いやりをしっかり持って行動してもらいたいのですが、”知っている人だけが知っている”という法律になってしまっていたがために、今回のような百貨店での入店拒否問題が発生してしまったわけです。
販売員も法律を知る必要がある
個人情報保護法が制定されたとき、日本中の企業は騒然となりました。しかし、今回の身体障害者補助犬法はまだまだ認知されていないのが現実です。
「従業員が思いやりを持っていればいいじゃないか」という言葉もありますが、現場の従業員は、補助犬同伴者に対しての思いやりもあるはずですが、周りのお客様のことも考えてしまいます。他のお客様も補助犬を連れたお客様も同じお客様なのです。そのため法律や補助犬がどういう訓練を受けているかなどの情報を持っていなければ、衛生面などの不安から入店を断ってしまうこともあるんです。
結局今回のような入店拒否トラブルが発生してしまうのも、やはり認識不足からきています。
こういった問題については、販売員それぞれも付随する法律などがどうなっているかを調べることも必要になってきます。そして周りのお客様も含めて円滑な接客ができるように思いやりを持った精神を身につけることも大切です。
大々的にニュースになるような、何かトラブルが起きないと知られないというのは悲しい現実ではありますが、この機会に再確認していただき今後の営業活動に活かしてもらえればと思います。誰もが気持ちよく買い物や飲食ができる店が増えて欲しいと願います。