
こんにちは、坂本りゅういちです。
前回の話で、客単価を上げていくために複数商品を販売するには、お客様が買うと決める前が大事だとお伝えしました。
購入する商品が決まった後だと、すでに金額の計算をしてしまっているために追加で購入するものを増やすのは心理的に負担が大きいからという理由でしたね。
ですが、だからと言って買うと決めた後に追加提案をしない方が良いかと言うと、決してそんなことはありません。
購入を決めた後に追加で買いやすくなる現象も起こるからです。
これは昨今よく話題にも上がる行動経済学(プロスペクト理論)でも『参照点』という言葉で説明されています。
たとえばスーパーで買い物をする時に、レジ前に置かれているお菓子を追加でカゴに入れてしまう。まさにこれが買うと決めているのに追加で買ってしまうという現象ですよね。
販売業界ではよく『プラスワン』と呼ばれますが、ハンバーガーを注文するのに「ご一緒にポテトはいかがですか?」につられてポテトも追加してしまうのです。
だから、追加提案をしない方が良いと言うわけではなくて、できるのであればどんどんやっていけた方が複数販売には繋がっていくのです。
しかしこのプラスワン的な提案にも、大きなポイントがあります。
それは、当初より少額であることです。
先ほどの『参照点』に戻りますが、なぜ追加で買ってしまうかというと、簡単に述べるなら感覚が鈍くなるからです。
1,000円のお肉を買うのは躊躇する人が大半だと思いますが、高級焼肉店ですでに2万円分食べている時であれば、「追加で1,000円のお肉を注文」するのは精神的な負担が少なく感じますよね?
ゼロの状態からの1,000円は大きいですが、2万円の状態からの1,000円は小さく感じるのです。
参照点の説明では、基準となるゼロの状態があります。
そこから損得が離れていくほどに感情の変化(喜び/悲しみ)が小さくなるとされます。
ゼロから1,000円の金銭的な損と捉えるのか、ゼロからすでに2万円分の損をしている状態に追加で1,000円の損と捉えるのかの違いです。
これがもし2万円からさらに2万円や、もっと多い3万円となってくると、捉え方がまた変わってしまいます。
とするとつまりは、当初の金額よりも少額であることで、買いやすくなるという心理が働くわけですね。
ですからプラスワンアイテムは普通、店舗内でも安価な商品になっていることが多いはずです。
もしそういうアイテムがあるのであれば、積極的に提案をするというのはやはりやっておきたいところ。
さらに参照点をもとにした話では、金額の基準にも大きな影響を与えます。
通常10万円の支払いをするとなると、これはとても大きな痛みを伴いますよね。だから「10万円かぁ」と悩み抜いて、買うかどうかを考えるはずです。
しかし、たとえば300万円の時計を買うとなった時に、「追加で10万円お支払いいただけると、長期保証に入れます」と言われると、途端に10万円の追加をする人が増えます。
先ほどの例と同じ現象が起こっていますが、通常では考えにくい金額のものでも、当初の金額と比べての少額であれば売れることは少なくないのです。
今にして思えば、僕と妻の結婚式で会場に飾ってもらった花の金額はとんでもなかったなと思いますが、当時は結婚式全体の金額がすでにあったので「どうせならこれも追加しよう」となった記憶があります。
これもまさに追加提案で買っている典型的な例だと言えるでしょう。
悪く言えば”うまく売る”ということになりますが、それをいかにしてお客様に「損をした」と感じさせないか、「買ってよかった」と感じてもらうかは、接客や販売力として磨く必要があります。
それはまた別の話ですが、理論としてわかっていると複数販売ももっとしやすくなっていきます。
1)追加提案で購入したことはありますか?もしあるなら、その時の自分自身の心理はどのように動いていましたか?
2)自店でプラスワン提案でより客単価を伸ばしていくために、接客やディスプレイで改善できることはありませんか?
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