新人販売員向け/他の商品を見せるためのスライド提案を知ろう

こんにちは、坂本りゅういちです。

客単価アップの接客について何日か書いてきましたが、今回で一旦最後にします。

最後は、他の商品をどのように持ってくるかについてお伝えしておきましょう。

これまでの話で、商品決定までになるべく多くの商品を見せておき候補に入れたいということを書いてきました。

でも実際のところ、1つの商品を見ているお客様に対して他の商品を持ってきて見せ、候補に入れていくというのはなかなか難しいですよね。

この接客がしやすいのはアパレル販売なのですが、今回は具体的な接客例をもとに考えていきます。

《接客例1》

お客様(以下、客)「暑くなってきたから、半袖のTシャツが欲しいんですよね」

販売員(以下、販)「Tシャツでしたら、こんなアイテムがございますよ」

(Tシャツを見せる)

客「あ、いい感じですね」

販「そうですよね」

客「うーん、どうしようかな」

販「(よし、ここで他の商品も候補に入れなきゃ)他にもこちらのパンツはいかがですか?このTシャツによく合いますよ」

客「いや、今回はTシャツが欲しいので大丈夫です」

かなり簡略化していますが、店頭でよくあるパターンがこの接客です。

他の商品を見せたい(候補に入れたい)のはよくわかるのですが、この持ってきかたをしてしまうと、お客様は売り込まれ感を強く感じてしまいます。

そうなる理由は、まだ自分の欲しいものを買うイメージがあまり湧いていないのに、他の商品の提案をされてしまっているからです。

では、持ってくるのがうまい販売員はどうしているでしょうか?

《接客例2》

お客様(以下、客)「暑くなってきたから、半袖のTシャツが欲しいんですよね」

販売員(以下、販)「Tシャツでしたら、こんなアイテムがございますよ」

(Tシャツを見せる)

客「あ、いい感じですね」

販「そうですよね」

客「うーん、どうしようかな」

販「合わせるパンツはどんなものでお考えですか?」

客「そうですね、シンプルにデニムと合わせようかなと思ってます」

販「デニムとTシャツのコーデなら鉄板ですね。お手持ちのデニムはどんなデザインですか?」

客「ブルーデニムで、シンプルなストレートです」

販「ストレートとは違いますが、少しフレアのかかったデニムがあるので、こちらで色味をご覧になってみてください」

(デニムを持ってくる)

客「あ、やっぱり良さそうですね」

(ここである程度Tシャツの購入に気持ちが傾く)

販「間違いないですよ。ストレートをお持ちとおっしゃっていましたが、フレアもよく履かれていますか?」

客「いえ、フレアは持っていないです」

販「少しフレアがかかったデニムだと、シンプルなTシャツでも全体のシルエットがスマートに見えるんですよ、こんな感じです」
(コーデの全体像を見せる)

客「確かに…フレアもあるといいかも」

販「このフレアデニムでしたら、たとえばこちらのトップスとも相性が良くて…」
(さらに別のトップスを見せていく)

こちらもかなり簡略化していますが、接客例1との違いがお分かりいただけるでしょうか?

1との大きな違いは、最初からデニムの提案のために持ってきているように感じさせていないことです。あくまでもTシャツの提案の補足として、デニムで色合わせをしているように感じられますね。

しかし、ある程度お客様がTシャツを買おうかなという気持ちになってきたタイミングで、今度はフレアデニムが欲しくなるような商品説明をしています。

ここではさらに、フレアデニムと相性の良い別のトップスにまで話が及んでいますね。

こうした提案を僕はスライド提案と呼んでいます。

最初のTシャツからデニムにスライドし、さらに別のトップスにスライドしていくイメージからです。

呼び名は別にどうでも良いのですが、徐々に提案をスライドさせていくことで、無理やり売り込んでいる感を低減し、お客様への提案数を増やしていくわけです。

もちろん現代の買い物の仕方で考えると、合わせたいパンツが先にもう決まっていて、それに合わせるトップスを何着か買うというパターンも少なくありません。

その場合は、あえてデニムはデニムとしてもう決めてしまって、合わせられるトップスをどんどん見せる方が良い場合もあります。

これはお客様のニーズによって変化をつけていくべきところですが、先のスライド提案は複数提案の基本的な見せ方だと言っても良いでしょう。

これができないと、どうしても売り込み感が強くなるので。

最終的にいくつかの商品を候補にした状態でクロージングをしてくことで、「じゃあ今日はTシャツとフレアデニムも一緒に買っていきます」となれば、Tシャツ単体ではなく複数のセット販売ができます。

いかにして他の商品を見せていくかは、複数販売の肝です。

しっかり練習をして、スライド提案だけではなくいろんなパターンを身につけておきたいですね。

ぜひ自店に合わせたやり方を考えておいてください。

今日の質問&トレーニングです

1)スライド提案を自店で使うとしたら、どのような流れが考えられますか?

2)実際にスタッフ同士で練習をして、やり方を身につけておきましょう。

3)スライド提案以外に、自店商品に合わせたスムーズな複数提案をするなら、どんな手法が考えられますか?

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ABOUTこの記事をかいた人

接客販売トレーニング&コンサルティング事務所kocori(ここり)代表。 SC接客マイスター1級。 アパレル・時計・靴・リラクゼーション業界など、様々な販売を経験し、売上日本一など数々の実績を残す。kocori設立後は、企業研修・コンサルティング、講演などを中心に活動している。