お客様のお葬式に呼ばれた販売員の話

こんにちは、kocoriの坂本りゅういちです。

お正月が明けてまだそんなに時間も経っていない中、物々しいタイトルですみません。

今回は、私が接客業だった頃、思い出に残っているお話をしたいと思います。

この話はずっと書くかどうかを悩んではいたのですが、今一度自分の接客に対する思いを見つめ直したくて、書いてみようと思った次第です。

個人的なことなので、興味のある方にだけ読んでもらえたらありがたいです。

ご夫婦で来店されていたお客様

私がストレッチトレーナーとして働いていた数年前、二人のお客様がいました。

一人は最初にお店を見つけて通ってくれるようになり出した、男性のお客様。当時40代半ばか後半くらいの方だったと思いますが、身体を改善したいということで、店のサービスを気に入ってくださり通い始めてくれました。

それからしばらくして、同じくらいの世代の女性のお客様が来店されました。

施術をしながらよくよく話を聞いてみると、その男性のお客様の奥様だということがわかり、「早く言ってくださいよ!」なんて笑いながらお話をしていたことを覚えています。

その後、奥様は私を指名してくれるようになり、旦那さんは普段は特に指名はなく、たまに私を指名してくれるという感じでお店に通い続けてくれました。

お二人ともとても面白い方達で、店のスタッフ全員が気さくに話せるようなご夫婦。

お店の周年記念には、一升瓶を持ってきてくれるなど、豪快なところもあって、施術をしている時は本当に笑いながら楽しく過ごさせてもらっていました。

なぜか突然来店されなくなった

それからしばらくの間は、お二人ともども一緒に来店されることもあれば、日にちをずらして来店されることもあるなど、長いお付き合いをさせてもらっていました。

「今日は〇〇さんの予約入ってるよ」と、スタッフ同士でもよく話題に上がっていたのを思い出します。

しかし、ある時を境に、急にお二人とも来店されなくなってしまいました。

予約が無くなってから、連絡がつかなくなってしまって、全員が「あんなに気に入ってくれていたのにどうしたんだろう」と心配し出しました。

正直言えば、当時の私の接客も含めて、まだまだお店全体で至らないこともあったと思っているので、「何か不備があったんじゃないだろうか?」「何か気に触ることをしてしまったんじゃなかろうか?」と、とても不安な日々でした。

すごく仲良くさせてもらっていただけに、何かのミスやトラブルで来店がなくなってしまったと考えると、あまりに残念だったからです。色々と思い返しては見るものの、どれが原因なのかがわからず、ただ時だけが過ぎていきました。

数ヶ月後のメッセージ

そこからまた数ヶ月後、突然、奥様から私の携帯にメッセージが届きました。

あまりに急だったので、内心「あ!〇〇さんからだ!」と嬉しくなったのですが、メッセージの内容を見て愕然としました。

そこには、「主人が亡くなりました。お葬式に顔を出して欲しい」というメッセージが書かれていました。

それなりに接客業をやってきて、いろんなお客様とも触れ合ってきた私ですが、お客様が亡くなったことを知らさせたのはそれが初めてのことでした。

あまりのことに、いつも楽しく接客をさせてもらっていた旦那さんの顔がよみがえり、言葉にならず呆然としてしまいました。

周囲のスタッフに伝えた時は、スタッフたちも同じように声にならないほど驚いていました。

一体何があったのかと思いましたが、私は「伺います」と返信をしました。

お葬式でのこと

それからすぐ、礼服に身を包んで、割と近所にあった斎場へ向かいました。

歩いて向かう道中も、何が起こっているのかがよくわからず、混乱しているような状態でしたが、斎場へ着くと、すでにお葬式が進められていました。

中へ入ると、入り口のあたりに久々にお見かけする奥様が立っていて、声をかけました。

私の顔を見て笑顔になってくれた奥様に、「この度はご愁傷さまでした」と伝えたのですが、それもいまだに現実に言っていたのかどうかもよくわかりません。ですが、奥には旦那さんの遺影が飾られていました。

御焼香を済ませて、奥様と少しだけお話をさせてもらいました。

詳しくは聞くことができませんでしたが、旦那さんが少し精神的なご病気を患っていらっしゃったことは私も知っていたので、奥様もそれを察するような言葉が聞かれました。

ただただもうお会いできないということが辛かったのですが、奥様から

「来てくれてありがとうございます」「坂本さんにはお世話になったからお呼びしたくて」

と言っていただきました。

気丈に振る舞われている奥様の様子を見ていると、何もまともな言葉を伝えることはできませんでしたが、お別れの時に立ち会わせていただいたことに深く感謝をしました。

こんな関係を作っていきたい

起こったことはここまでです。後日談は特にお話しするようなことでもないので、あえて書くこともないのですが、この件は私の接客販売人生において、いろんな意味でとても深く残っています。

私は「販売員はお客様に未来を売る仕事」だと思っています。

お客様のより良い未来、お客様の楽しい未来にお力添えができる仕事であり、それが接客業の楽しさでもあるのだと考えているわけです。だから、お客様の私生活に踏み込むことも多々あって、それが商品販売につながるものでもあります。結果として、売り上げにもつながり、会社は繁栄・存続し、またお客様に楽しんでもらえる商品づくり、店づくりができます。

ただ、接客という仕事はそれだけではないように思います。

特にこと販売員という個人においては、人の人生に携わることがあるのです。

ベビー用品を売っているお店の販売員であれば、人が誕生するという最初の瞬間に直接関わることになります。

学生服を売っているお店の販売員であれば、人が成長し新たな一歩を踏み出す瞬間に関わることになります。

婚約指輪を売っているお店の販売員であれば、人が人と寄り添い人生を歩む決心をする瞬間に携わることになります。

そして、私のように突然亡くなってしまった人の最期に携わることもあります。

どんな時だって、人の一生の中の大切な瞬間です。

嬉しいことでも喜ばしいことでも、例えそれが悲しいことであったとしても、お客様のその瞬間に立ち会える販売員でいられるかどうか。本当の意味で良い接客ができる人というのは、お客様も一緒に同じ時間を過ごしてもらいたいと思うものなのかもしれません。

だから私自身、そういう人間であり続けたいと思い続けています。

もしお客様が結婚するのなら、その結婚式に呼んでもらえるくらい、

(考えたくはないですが)もしお客様がお亡くなりになってしまったのなら、そこに立ち会わせてもらえるくらい。

それくらい深い関係を築ける人間でありたいものです。

編集後記

少し久しぶりに改めて文章にして考えてみましたが、パソコンを打ちながらつい泣いてしまいました。

私が関われたことが、ご夫婦の人生にとってどんな意味があったのかはわかりませんが、今でもお二人には感謝をしています。

あまりに早いお別れだったので、今でも思い返すと辛いものがありますが、それでもお葬式という場に呼んでもらえて最期にお別れが伝えられたのは、私にとってはありがたいことでした。

このことは、私が死ぬまで覚えているであろう大事な思い出です。

もちろんできれば嬉しい、喜ばしいことばかりにご一緒したいものですが、どんなことだったとしてもお客様と長くお付き合いが続けられる人でいたいと改めて感じました。

もし、この話を読んで「自分もお客様と深い関係を築きたい」と思ってもらえる販売員の方が一人でもいてくれたら、こんなに嬉しいことはありません。お読みいただき、ありがとうございました。


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ABOUTこの記事をかいた人

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接客販売トレーニング&コンサルティング事務所kocori(ここり)代表。 SC接客マイスター1級。 アパレル・時計・靴・リラクゼーション業界など、様々な販売を経験し、売上日本一など数々の実績を残す。kocori設立後は、企業研修・コンサルティング、講演などを中心に活動している。