台無しになる瞬間
あなたが接客をして、必死に商品を提案して、何とかお客様に気にいってもらえて、ようやく商品を売ることができました。
しかし、その後の”ある瞬間”で全てが台無しになってしまうことがあります。
それは『お会計』です。
『お会計』を甘く見たがために、それまでの苦労を自分たちで無駄にしてしまっている販売員やショップに出くわすことが、いまだに少なくありません。
なぜ『お会計』で全てが台無しになってしまうのか?
『お会計』の時というのは、販売員が一番油断しがちな瞬間かもしれません。
長い時間接客をして、ようやく売れたという開放感から、気が緩んでしまいがちな時だからです。
ですがその瞬間は、お客様が『この商品を買って本当に良かったのかしら?』と思っているタイミングでもあります。
このタイミングで、『買ってよかったんですよ』と、後押しができる接客が最後までできるのかどうかが、次回のご来店に繋がるかどうかの重要なターニングポイントになります。
というのも、人の記憶は新しいものに上書きされていきますよね。
当然、お客様にとってのショップや販売員の記憶(イメージ)は、お店に入った瞬間よりも、お店を出る瞬間の方が鮮明に残ります。
お会計というのは、お客様のイメージを決定づける危険な時間なんです。
ここでひどい応対をしてしまうと、お客様の記憶には、そのひどい応対の記憶が残ってしまい、再来店に繋がることもなくなってしまいます。
こんなことをしてしまうと、良くない記憶が残ってしまう
ほとんどの販売員が接客で神経を使うのは、お客様に商品提案をしている時です。
お客様のニーズ・ウォンツを引き出し、それに見合った商品をうまく提案する。そこで四苦八苦することになります。
そして、そういう販売員は、提案した商品が決まると、その時点で結構ホッとします。経験者なら何となくわかりますよね?
実はそのタイミングで気がゆるんでしまう人が大勢いるんです。
そうすると、お金をもらってお会計をする時に、思わぬポカをやってしまうんですね。
稀にですが、私も買い物をして、お会計の瞬間にとんでもないことをしてくる販売員を見ます。
クレジットカードのサインを記入する際に、渡されたペンが100円均一の安物だったり、商品が適当にお包みされているのが見えてしまったり。
クレジットカード決済でミスをすると、お客様に取り消しの確認サインを余分にもらう必要が出たりもします。検品を雑にやっている様子を見られて、印象を悪くしてしまうこともあるかもしれません。(その結果、商品にキズがあることに気づかないなんてことも起こるかもしれませんよね)
ひどい時は、ドアの向こうで「やっと売れたよ~」と話している声が聞こえることすらあります。これを本当に聞いた時は、まぁ萎えました…
そして、結構ありがちなのが、忙しい時に会計担当が変わる時です。
それまで接客してくれた販売員が結構好感が持てる人だったのに、お会計で担当が変わると、すごく面倒くさそうにレジを打つ人がいたりします。
折角、そこまでは好感度が高かったのに、その一人の態度が悪いと店のイメージは一気に下がります。
別に忙しいから担当が変わるのは、状況次第ではしょうがないこともあるとは思います。
(もちろん一人がやるのが理想ではありますけども)
ですが、レジ打ちが続いているからと、会計担当が全くの無表情で淡々と仕事をしていると、『商品を手に入れることができて嬉しい』というお客様の楽しい思いが台無しです。
お会計は契約
お会計は言うなれば、お客様と販売員(店)との『契約』です。
この商品を、このお金を支払って購入しますよ、とお客様に契約を結んでもらっているんです。
そうすることで、販売員(店)側は商品を対価としてお渡しします。
この時間をおろそかにしてしまうと何が起きるか?
これまで書いてきたように、今までの全てが台無しになります。接客してきた時間全てがパーです。
お金を支払うまでは契約が完了していないのですから、ここで失敗をすれば最悪の場合、「やっぱりいいです」となるわけです。
そうならずとも、何か問題があった場合、印象は悪いまま終わってしまいます。接客の中で一番最後の部分ですから、そこがダメだとマイナスイメージが焼きつきますからね。
そこまで考えなくても、と思う方はご自分で想像してみてください。
あなたが決心して、5千万円のマイホームを購入する最後の契約時。
サインと判子を押す時の、営業マンの態度が今までと一変していたらどうでしょう。
それまでは、とても丁寧に応対してくれていたのに、決まった瞬間にやたらと傲慢な態度を取ってきたり、雑な対応に変わってしまったら…
多分、サインしないと思いますよ。(まずそんな人はいないでしょうけど)
金額は違えど、やっていることは同じです。
接客販売においてのみならず、商売にとって、一番重要と言っても過言ではない部分ですから、くれぐれも肝に銘じておいてください。
優れた販売員ほど、何よりもこの『お会計』の瞬間を大切にします。
「私たちの商品にお金を使ってくれて、ありがとうございます」という気持ちが伝わってくるのです。
その気持ちが全従業員共有のものであれば、先に書いたような台無しの瞬間は起こりません。
必ず全ての従業員が、お客様にその気持ちを持てるようにしておきましょう。
また、マネージャーの方はどうすればその気持ちを共有できるのか、工夫をしてください。